ビジネス倫理勉強会 第2回勉強会メモ (2010.12.17)
*本稿に記載されている意見等は勉強会出席者によるもの、あるいは筆記者が記述したもので、必ずしも中谷常二個人の見解とは同じとは限りません。
課題書「ソクラテスの弁明」
ソクラテス以前は世界と自分が一体の中にいるというアニミズム的考え方。
西洋哲学の源流である、自分と世界は別との認識を最初に打ち出した著作といわれ、後にプラトンがイデア論を打ち立てるもととなった。
ソクラテスの生き様、無知の知、産婆術、などは企業倫理にも通じるのではないか。
以下、印象に残ったコメントを順不同で記載
・ 徳について
いわゆる人徳ではなく職業により求められる能力のようなもの。
自社に求められる「徳」とはという議論も意味がある。
・ 有料で教えることについて
お金を稼ぐのがいやだったのか。 ⇒ 対価を得ないことによって哲学者としてのフリーな立場を維持したかったのでは。 ⇒ 会計事務所のジレンマに通じるかもしれない。
無償であることによって広がりやすくなる。 ⇒ リナックスの例。
金銭とは違う価値観を持っている。
ソクラテスは「教えている」という意識はないのではないか。
企業はどこまで社会貢献活動をすることができるのか。
企業という法人の場合、ステークホルダーの納得が必要であることが自然人との違い。
ソクラテスは損得を考えない生き方が共感を生むのではないか
・働くことについて
この当時、通常の労働は奴隷の仕事であり、自由人の仕事は政治か戦争しかなかった。
ソクラテスは戦士としては3度戦争に行っている。
・よりよく生きるということ
地位がなければ立派なこともできない。だからまず地位を得る必要はある、という考え方について
「よく生きる」は、「生きる」の真部分集合だから、よく生きるために死を選ぶのは論理矛盾では?
逆に、ソクラテスはここで死を選んだからこそ2300年にわたって語り継がれた。それが「よく生きた」ことになるのかもしれない。
一人を助けることと多数の人を助けることに価値の違いがあるのか。
妻の介護に余生をささげることの価値 v. s. 多くの人の命を救うために家族を捨てて仕事に尽くすことの価値、のどちらが尊いのであろうか。
国際協力したいというとき、外交官や国連で大きなことをしたいという人と、草の根活動をしたいという人はどう違うのか。
多数を助けるというとき、一人あたりに注げる力は薄くなるのではないか。
・なぜ、他人を批判しつづけたソクラテスの生き方が、よく生きたことになるのか
批判することの重要性
悪魔の代弁者(devil’s advocate)を設けることで、人は批判に耐える議論を作ることができる。
ソクラテスは批判することによって、哲学という学問を確立したといえる。
・東西の宗教観
「神」の存在に対する感覚が大きく違う。西洋は絶対神を持つ。
東洋では人間と自然が一体、西洋は自然を克服する。ただし、日本はアニミズムというより先祖崇拝の考えが強いと思われる。
日本人には、相対的な態度、前例主義など農耕民族の特性があるのではないか。
西洋の唯一絶対神と違い、相対的なものに依存していることは、日本人のアイデンティティが揺らぎがちになる原因かもしれない。
議論尽きず、次回に持ち越し。