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ビジネス倫理勉強会 第6回勉強会メモ (2011.04.20)

*本稿に記載されている意見等は勉強会出席者によるもの、あるいは筆記者が記述したもので、必ずしも中谷常二個人の見解とは同じとは限りません。

 

『ビジネス倫理学』、中谷常二編著、晃洋書房

 

リーディングス②

 

フリーマン「現代企業のステイクホルダー理論」 

 

・ステイクホルダー理論では、オーナー・納入業者・経営陣など全てのステイクホルダーが自立した存在として企業と対等の位置にあるとしたところがエポックメイキングと評価されている。

・ステイクホルダー理論では地域社会は、企業がその地域から人材やインフラなどの便益を受けているので、等価交換として企業から税金や雇用などの便益を受けるべきと考えられている。

・ウォールマート問題とは、ウォールマートが地域のインフラを使いながら地域を疲弊させるという問題

・日本では自治体が大型店舗をまちおこしに招聘したりするが、その建築物は50年を超えるような長い年月に耐えるように設計されたものではない。ある意味、将来的な撤退を前提とした建築物といえる。地域の中小店舗が廃業してしまってから、そのような大型店舗が撤退することもある。

・デトロイトから自動車工場が移転して出ていくことで廃虚化していくのも同じ構造といえる。それでも企業が街に対する責任を果たす必要はないか?

・企業に撤退することに対して責任があるとしても、それを行政が規制することで責任を果たさせるとなると、そもそもそこに企業が立地しないことになる可能性がある。

・企業 v. s. 地域(自治体)の関係は、企業 v. s. 労働者と違い、「力の差」が対等に近いのだから、自治体側にも責任があるといえる。

・企業に頼るのだけではなく、企業が立地したいと考えるような魅力(インフラや減税)を措置すると同時に、企業が撤退したときの対策も講じておく責任が行政にはある。

 

・ステイクホルダー理論では、新自由主義に対抗するものとしてカント主義から出てきたもの。それだけに初期のステイクホルダー理論には非常に厳格な義務論的考え方が含まれている。

 

・ステイクホルダー理論において、どこまでをステイクホルダーと考えるのかは難しい問題。ナイキの児童労働問題などを考えると、現代的な問題ではステイクホルダーの範囲は広がる方向にあるといえる。

 

・自社としてのステイクホルダーを定義して考えることは意義がある。

・ステイクホルダーのどこまでを自社の射程に入れるかは哲学論になってくる。

 

・企業は国と同等の経済的パワーを持ちつつある。その経営にごく一部の人間しか関与していないということは不自然に思われる。ステイクホルダーが参加する取締役会などを考えるのも、理論的には正当性を持つだろう。

・組織の統治の形態は企業によって違いがあってもよい。経営者を中心とした専制君主になるかどうかは組織形態の問題といえる。

・企業の統治のスタイルにも、ある程度ルールが必要。どこまでルールを決めるかという社会的なコンセンサスが求められる。

 

・株主重視理論はある意味シンプルで、分かりやすいから人気があるともいえる。他方、ステイクホルダー理論は漠然としたところがあり、実践された場合の具体的な企業のあり方も不明だ。ステイクホルダーの範囲をとってみても、どの範囲まで配慮すれば十分かは難しい問題である。それがビジネス倫理の哲学たるゆえんであり、魅力でもある。

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